AEDとは、Automated External Defibrillatorの略称で、日本語では自動体外式除細動器と言います。
除細動とは、不整脈などによって心臓がけいれんしている状態に対して電気ショックを行い、心臓を正常な動きに戻すことを指します。よく「止まった心臓を電気ショックで動かすもの」と誤解されがちですが、正しくは「けいれんした心臓を電気ショックで一時静止させ、通常の拍動の再開を促すもの」です。
この除細動を、一般市民(非医療従事者)でも簡単に使用できるようにした械器がAEDになります。
音声ガイダンスによる指示や、電気ショックが必要かの判断もAEDが行いますので、医療従事者がいなくても適切な救命処置が行えます。
AED(自動体外式除細動器)は、突然死の原因となる心室細動(心臓のけいれん)に対して、電気ショックを行い、心臓を正常な動きに戻す、一般市民が使用することのできる医療機器です。
音声ガイダンスによる指示や、電気ショックが必要かの判断もAEDが行いますので、医療従事者がいなくても適切な救命処置が行えます。
2004年に一般市民のAED使用が解禁されました(※1)。全国の駅や学校、官公庁などの公共施設などにAEDが設置され、2016年にはAED(一般市民が使用できるもの)の累計販売台数が約69万台となりました(※2)。
さらに数は増えており、企業や商業施設などにも設置が推奨され、普及が進んでいます。
AEDは子ども(未就学児)にも使用できます。詳細はこちら(独立行政法人医薬品医療機器総合機構のウェブサイト)
心臓突然死の主な原因に、心室細動や心室頻拍があります。これらは、心臓が正しいリズムで脈を打たず小刻みに震えてしまう(けいれんする)ことで、ポンプとして機能せず血液を送り出せない状態を指します。
このような症状が起こると、発生から1分ごとに救命率が7~10%下がるといわれるため、いかに早く救命処置(心肺蘇生)を行うかが生死を分けることになります。
心室細動や心室頻拍の危機から命を守るには、強い電気ショックを与えて心筋のけいれんを除去する電気的除細動が効果的だといわれています。この電気的除細動を自動的に行うのがAED(自動体外式除細動器)です。
AED(自動体外式除細動器)は高度管理医療機器です。
蘇生のチャンスは1分ごとに
7-10%低下するといわれています。
Adapted from text: Cummins RO, Annals Emerg Med. 1989, 18;1269-1275.
電気ショック
心室細動を
おこしている状態
一定のリズミカルな
心拍に戻った状態
心肺蘇生の手順などを記したJRC蘇生ガイドライン2020の中で、AED(自動体外式除細動器)は一次救命処置の一連の手順に含まれており、重要な役割を担っています。そのため、心肺蘇生とAEDの使用手順を知っておくことが大切です。
CPRとは、「Cardio Pulmonary Resuscitation」の頭文字をとったもので、胸を強く圧迫したり、息を吹き込むことによって、止まってしまった心臓や呼吸の動きを助ける心肺蘇生法のこと。
心臓が停止すると脳の血液の流れも停止し、それが約6分続くと脳の組織がダメージを受けるといわれています。また、約10分を超えると救命率が急激に低下します。
心肺蘇生法は、心臓や呼吸が停止した人に対して、すみやかに心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、脳のダメージを最小限に抑えるために行います。
心臓や呼吸が止まってしまった人を助けるには、119番通報したあと、AEDが来るまでのあいだ心肺蘇生法を施し、AEDがきたらこれを使って電気ショックを与えます。呼吸がない場合は、心肺蘇生法を施す前に、AEDを使用します。AEDの使用は、心肺の蘇生に最も効果があると評価されています。
(1)周囲の安全確認を実施
倒れている人を見かけたらまずは周囲の安全確認を行います。二次的危険がないかどうか確認してから倒れている人に近づきます。
※二次的危険の例:工事現場などでの上部からの落下物、交通量の多い路上など。
(2)反応の確認
軽く両肩をたたいて「大丈夫ですか」と耳元で声をかけ、反応を確かめます。
反応がない場合には、徐々に声を大きくします。
体の動きや何らかの応答がない、あるいは判断に迷う場合は、反応なしと判断します。反応がある場合は、どこか具合が悪いところがあるかを尋ねてください。
(3)応援を呼ぶ
反応がない、あるいは判断に迷う場合は、周囲に大声で助けを求め、119番通報とAEDの搬送を依頼します。
(4)呼吸を確認する
胸部と腹部の動きを目で確認し、普段通りの呼吸の有無を10秒以内で確認します。
普段通りの呼吸がない場合や、呼吸の有無が判断できない場合は心停止と判断し、心肺蘇生をはじめます。
※「判断に自信が持てない場合」も心停止とみなして胸骨圧迫を行うなど、対応に迷ったときも心肺蘇生を行うことが大切です。
※突然の心停止直後には、しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸が見られることがあります。これは「死戦期呼吸」と呼ばれ普段通りの呼吸ではないと判断し心肺蘇生を開始します。
(5)胸骨圧迫(30回)+人工呼吸(2回)を繰り返し実施
胸骨圧迫は胸部を約5cm沈む強さで、1分間に100回から120回のテンポで強く、速く、絶え間なく押しましょう。人工呼吸は、あごを上に向かせて気道を確保し、倒れている人の鼻をつまんで口から息を2回ゆっくりと吹き込みます。そして、「胸骨圧迫30回、人工呼吸2回」のサイクルを、AEDが到着するまで繰り返します。
※人工呼吸については、講習を受講し技術を身につけて、かつ、行う意思がある場合に実施してください。
<胸骨圧迫のポイント>
肘を真っ直ぐ伸ばし、傷病者に対し腕が垂直になるように圧迫することがポイントです。傷病者が大人の場合は、両手で胸部を約5cm沈むまで圧迫し、傷病者が子どもの場合は両手、または片手で胸の厚さの3分の1沈むまで圧迫してください。力に自信がない女性でも体重をかければ効果的に行えますが、胸骨圧迫を絶え間なく続けることは、体力を使うため、周囲の人と協力して複数人で交代で行うことが大切です。
(6)AEDの操作
AEDの到着後、電源を入れ、音声ガイダンスに従い、操作します。
電気ショックの指示があった場合は、周囲にいる人に離れるように指示した後、ショックボタンを押します。
(1)AEDのふたを開けます。
(映像のAEDではふたを開けると、電源が自動的に入ります。)
※電源ボタンを押すタイプのAEDもあります。
(2)音声ガイダンスに従い、AEDのフタから四角い袋を取り出し、袋を破いて、パッドを取り出します。
2つの電極パッドをシートからはがして装着部位(右胸と左脇腹)に貼り、体から離れます。するとAEDが心電図を調べ、電気ショックが必要かを自動的に判断してくれます。
(3)電気ショックの指示があった場合は、周囲にいる人に離れるように指示した後、ショックボタンを押します。
心停止には、心室細動や心室頻拍のように電気ショックが有効となるものと、そうでないものがあります。AEDはこの電気ショックの必要有無を自動的に判断してくれます。電気ショックが必要でない場合、電気ショックが不要である旨を音声ガイダンスより指示されますが、電気ショックが不要だからといって傷病者が回復したというわけではありません。傷病者に反応がない、あるいは判断に迷う場合は、救急隊員に引き継ぐまで、周囲の人々と協力し、胸骨圧迫を継続することが重要です。