ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 製品事故から消費者を守る動き
2009年9月1日、内閣府の外局として消費者庁が発足しました。日本政府の組織は、殖産興業をめざした明治維新の影響が未だに残っており、基本的には産業側、生産者・供給者側に立った構成をしています。消費者庁の設置は、視点をこれまでの供給者側から消費者側に移したという意味で、行政の画期的なパラダイムシフトであると言えます。
最近も、エアコン室外機や洗濯乾燥機が発火する、デジタルカメラで手をケガする、というようなニュースがマスコミを騒がせています。家電を始めとして、市場に並んでいる多くの製品は、私たちが現代的な生活を行ううえで、なくてはならないものですが、不具合があると火災などの事故の原因となる可能性があるため、生活する上での安心という観点では注意する必要があります。そして家電製品などの家庭内製品の事故は、皆さんが思っている以上に発生しています。
これまでも、製品評価技術基盤機構からは、複数のメーカーから発表される製品の不具合やリコールの情報が、統合されて公開されていたのですが、残念ながらあまり知られてはいないようです。今般、消費者庁が発足したことにより、これらの情報は、より分かりやすい形で世の中に提供されてくるものと思います。
消費者保護の政策は、1968年に消費者保護基本法が制定されたことに始まります。この法律により、メーカーは自らの製品に責任を持たねばならなくなりました。また、現代の消費者は、製造物責任法(いわゆるPL法)によっても守られています。そのため、多くのメーカーは製品の不具合をなくす努力を行っていますが、小さいながらも、ある確率で事故が起こってしまう可能性は残ってしまいます。そのため、市場にある膨大な数の製品の中には、残念ながら事故を起こしてしまうものが存在します。
メーカーは、製品に自らの責任による不具合が発見された場合、速やかにその情報を公開、市場からその製品を回収して無償で修理改善などを行わなければなりません。これらの対応については、消費生活用製品安全法という規定も存在しており、経済産業省からは運用に関するハンドブックも公開されています。
コンピューターの世界では、製品の使用に際し、ユーザー登録をすることが、当たり前のこととして行われています。製品に不具合が見つかった場合、速やかに利用者への告知が行われ、多くの場合、パッチと呼ばれる不具合改善ソフトウエアが無償で公開され、それにより不具合に対応することが一般的に行われます。「ユーザー登録をする」ということで、それを可能にしています。
最近、デジタル家電の普及とともに、コンピューターの世界と家電の世界との垣根が低くなり、家電製品がコンピューター化しつつあります。それにともなって、家電製品の世界にもコンピューターの世界で行われている「ユーザー登録をする」動きが起こり始めています。製品の利用者を登録することで、その製品に何らかのトラブルが発見された場合には、メーカーは早急なる対応が可能となります。
ユーザー登録は、今はまだ、デジタル家電製品の一部で行われている状況ではありますが、消費者として自らを積極的に守る第一歩として、忘れないように登録を行うことが肝要です。今後、デジタル家電製品にとどまらず、市場に出している多くの製品においてユーザー登録が行われるようになってくるものと思います。製品に何らかのトラブルが発生した場合の対応スピードが非常に早くなるため、メーカー側にとっても消費者側にとっても有効な仕組みと言えるでしょう。
ますます高機能化する製品を扱ううえで本当の安心にいたるためには、メーカーや行政が取っている、なるべく事故を起こさない対策と同時に、万が一事故が起こってしまった場合に、消費者として速やかに行動を起こせるための準備をしておく必要があります。この観点から、今回発足した消費者庁には、積極的で迅速な情報発信に加え、消費者のよりいっそうの啓発活動を期待したいと思います。
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利 康文
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