ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 想い出の写真が消えてしまう2〜読み出す機械がなくなる問題〜
前回のコラムでは、情報メディアに記録したデジタルデータの劣化の問題に触れましたが、過去のデータを見ることができない状況は、データ自身の劣化が起こった場合ときだけに発生するわけではありません。日本のオフィスにおいてワープロが使われ出した30年ほど前、私たちは8インチのフロッピーディスクを使って、文書情報を記録していました。この8インチのフロッピーディスクに記録された情報ですが、もはや一般にある環境では読み出すことができません。フロッピーディスクを読み出すドライブ装置が、今の世の中にほとんど存在しないことがその主な理由です。
紙などの昔からある媒体の上に物理的に書かれた文字や絵などの情報は、それを読むのに専用の装置を必要としません。それゆえ、紀元前の大昔に記録された文書なども、それを入手することができれば、解読することが可能です。ところが、情報がいったん何らかの方法で電子化されて記録された場合、それを読み出すには必ず何らかの装置が必要となります。たとえ、電子化され、記録された情報が劣化せずにそのまま残っていたとしても、それを読み出す装置が手に入らなければ、その情報はないのと同じということになってしまいます。
世の中では、タブレット型の端末の爆発的な普及が予想され、この端末やパソコンで読める電子化された書籍を出版・提供する動きが進んでいます。そのため、日本では、この電子化された書籍についても、従来からの紙の本同様に、現代の文化を記録した文化財として国立国会図書館への納本を義務づける方向で検討が進んでいるとのことです。電子化された書籍に記録された情報も、将来に残す必要があるからです。
図書館の大きな社会的使命のひとつに、アーカイビング(Archiving)、すなわち「今ある情報を、時代を記録する文化遺産として後世に伝えること」があります。しかしながら、たかだか30年前に8インチのフロッピーディスクに記録した情報ですら簡単には読み出せないのです。図書館関係者は、今ある電子化された膨大な情報を、どのような形であれば1000年、2000年後の未来に残せるのかについて頭を痛めています。
この、今ある情報を将来に残すアーカイビングの問題は、社会全体で考えなければいけない人類文化的な大きな問題に留まりません。私たちが、身近に、個人的に記録する情報についても全く同じことが言えるのです。アナログ方式の家庭用のビデオカメラが発売されてから約30年の時が流れています。このビデオカメラで記録された個人にとって重要な画像情報についても、もはや誰もが簡単に読み出せるという状況にはありません。オフィスなどで8インチのフロッピーディスクに記録された情報と同様のことが起こっています。個人で記録する、自分にとって重要な情報をどのような形で残すのが良いかについて、10年後、20年後のことも考えておく必要があります。情報のアーカイビングが個人の生活にも関わる問題でもあることがお分かりいただけたことと思います。
情報家電の世界では、日常茶飯事で規格競争が行われています。競争に敗れたり、新しい規格に取って代わられたりした規格はやがて忘れ去られ、人々の話題に上ることもなくなります。しかしながら、その規格で記録された情報の中に、将来に遺すべき重要な情報がないとは誰も言えないのです。IT化がどんどん進み、多くの情報が電子化されて記録されている昨今、社会全体で考えていかなければならない重要な問題になるのではないかと思います。
(参考)
・電子情報の長期的な保存と利用(国立国会図書館)
・国立公文書館
・全国歴史資料保存利用機関連絡協議会
・セコム電子データ長期保管サービス
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利康文
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