ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > その組織は人を育てているか サービス業の宿命
皆さんは「ベストエフォート」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。もともとは「最善の努力(Best Effort)」を示す英語表現で、1990年代半ばに日本においてインターネットサービスが普及すると同時に良く聞かれるようになった言葉の一つです。
通常、対価をやり取りして何らかの仕事を請け負う契約を結ぶと、その仕事を請け負った人間は仕事の結果について責任を負うこととなり、あらかじめ定めた状態を達成していないと債務不履行責任を問われます。この仕事の最終的な状態について保証するタイプの請け負い仕事は、「ギャランティ(Guarantee: 保証)型」と呼ばれます。「家電製品の修理」や「建物の建築」などの仕事が代表的なもので、一般にモノが絡む場合、請け負い仕事はギャランティ型で行われる場合が多いようです。
一方、ベストエフォート型の契約で、仕事を請け負った場合、仕事を請け負った人間に義務づけられることは「最善の結果を得られるよう努力すること」です。仕事を行う上で、その努力がなされないときは債務不履行責任を問われるものの、その努力がなされた場合には、結果に対する責任を問われることはないというのが原則です。
一般にサービス業の場合、サービスを提供すること自体はギャランティ型である場合でも、その内容や結果についてはベストエフォート型である場合が多くなっています。たとえば、飲食店や塾などのサービス業では、顧客の希望する料理を提供したり、生徒が授業を受けられるようにしたりすることについては、ギャランティ型で行わなければなりませんが、「料理の味」や「生徒の成績向上」については、最善は尽くすもののその結果までの責任は負わないという意味で、ベストエフォート型です。それゆえ、同じ名前の料理でも、それを作る料理人のスキルによって味がまったく違ったり、同じ数学の授業でも、それを教える人間のスキルによって生徒の理解度がまったく違ったりします。
サービス業の場合、そのサービスを提供する人間のスキルを高いレベルで均一化し、それを維持するためには、相当のコストをかけて、資質の高い人間を雇い、その人間に対して十分に教育を施して、その能力を向上、維持していく必要が生じます。これは、サービス業全般に課せられた宿命であり、「人が提供するサービス」という無形のものを商品としている業である以上、この宿命から逃れるのは難しいのです。この観点に立つと、サービス商品を選ぶ際のポイントは、そのサービスを提供する組織が、資質の高い人間を雇い、かつ十分に教育を施して、そのスキルを向上、維持していく努力をしているかどうかについて見ることだと言えます。
さて、ここで最後に「ホームセキュリティ」サービスについて考えてみましょう。ホームセキュリティもサービス商品の一つであるため、それを提供する組織はサービス業の宿命から逃れることはできません。同じ商品名を名乗っていても、そのサービスの内容や質については、ベストエフォート型ゆえの差異が生じるということが、ごく普通に起こり得ます。ホームセキュリティを選ぶ際には、先のコラムで触れた「その組織が持つ経験」に加え、その組織が、いかにそのサービスを提供する人間の質にこだわっているかについても注意して損はありません。
(参考)
・セコム防犯・防災用語集「セキュリティサービスを提供する人間」に関する解説
・研修・教育 (セコムの研修・教育制度紹介ページ)
・名人が名人である理由(2010年9月27日「安心豆知識」)
・セキュリティは単純な価格比較では選べない(2009年3月2日「安心豆知識」)
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