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お金の形態変容に伴う犯罪手口の変化に注意 窃盗から詐欺へ

 あけましておめでとうございます。本年も「安心豆知識」をどうぞよろしくお願いいたします。

お賽銭と泥棒
 年初休みに、神社仏閣などに初詣に行かれた方も多いかと思います。初詣に限らず、神社仏閣にお参りをする際、私たちは賽銭箱にお賽銭を投じます。神社仏閣にとってお賽銭は重要な収入源の一つとなっています。

 過去のコラムで、お金の入れ物が泥棒にとって恰好のターゲットになることについて触れたことがありますが、これについては賽銭箱も例外ではありません。賽銭泥棒は昔からある泥棒の手口であり、これにやられたことのない神社仏閣は少ないのではないかと思います。

お金の正体とは?
 さて、それでは私たちが初詣などの際にお賽銭として投じ、泥棒も狙う「お金」の正体とは一体何でしょうか?

 経済学の入門書をひもとくと、お金、すなわち貨幣とは、「価値尺度、流通手段、価値貯蔵の3つの機能を持ち、商品の交換を行う際の媒介物として用いられるモノ」と定義されています。逆に、さまざまな有形の財物、無形のサービスなどに交換できるだけでなく、貯めることもでき、かつ財物やサービスなどの価値尺度にもなるモノのことを「お金」と呼んだとも言えるでしょう。

 また、他の財物と交換する目的で用意された有形の財物、無形のサービスは「商品」と呼ばれます。商品の「価値」は、そのものの他の商品と交換可能性として表され、その程度がお金の量の大小、すなわち「金額」というモノサシで計られていると言えます。

 このお金ですが、はじめは貝や石、そして米などさまざまなものが用いられましたが、やがて、物質的に安定で自然界ではほとんど変質しない金(きん、Gold)が用いられるようになりました。しかし、物質としての金は、やがてその金との交換証書(兌換(だかん)紙幣)に取って代わられ、さらには金とは交換できないものの、発行主体がその価値を保証する保証書(不換紙幣)になっていったのは、皆さんご存じの通りです。

お金はモノから情報へ
 最初お金として用いられた「金」は、多くの人間が価値を認めた「物質」ですが、それが紙幣になった段階で、お金はもはや「物質」ではなくなり、「多くの人が価値があると信じる情報」にその本質を変貌させています。銀行口座の記録である通帳に記載されている金額情報は、必要に応じて、物理的な存在である紙幣やコインに変えることができます。その意味で、銀行口座の金額情報は、実体を持った貨幣に交換できる、いわば「兌換(だかん)情報」とでも呼ぶべきものであると言えるでしょう。

 今や、「インクが載った紙片」や「型が刻印された丸い金属板」のみでは、市中に出回る「お金」を議論することはできません。世の中では、多くの商品が、物体としての紙幣やコインをやり取りすることなしに、金融機関の口座残高という金額情報が移動することで、売買されています。電子マネーやクレジットカードなどを使ったキャッシュレスの買い物は、金額という数字で表される「価値情報」としてのお金と、商品とを交換する行為であると言えるでしょう。「価値尺度、流通手段、価値貯蔵の3つの機能を持ち、商品の交換を行う際の媒介物として用いられるモノ」として、形の存在しない「情報」が使われるようになってきたということです。

詐欺に気をつけなければならない理由
 好むと好まざるとに関わらず、今後、お金はますます「情報化」していくことでしょう。情報と化したお金は、物質としてのお金と異なり、窃盗という物理的な行為で盗むことはできません。情報化したお金を盗む行為は、一般に「窃盗」ではなく「詐欺」と呼ばれます。これからの「泥棒」は、窃盗という物理的行為のみならず、詐欺という知能的手口で、情報に姿を変えているあなたの財産を、狙ってくるということです。

 初詣のお賽銭を「電子マネーでピッ!」という世界は、まだまだこれからかも知れません。しかし、お金の情報化がどんどん進みつつある現代に生きる私たちは、泥棒という物理的犯罪への注意もさることながら、詐欺という知能的犯罪にも十分に気をつける必要があることを忘れてはいけません。世の中で「振り込め詐欺」が増えているのは、決して偶然とは言えないのです。

(参考)
・安心豆知識「昔あった『夜間金庫詐欺』の現代版とは?」
・安心豆知識「個人でも重要になってきた情報セキュリティ」
・安心豆知識「募金箱が盗まれる お金が入っている入れ物は狙われる」

セコムIS研究所
リスクマネジメントグループ
甘利康文

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