ホーム > ホームセキュリティ > 月水金フラッシュニュース > 月水金フラッシュニュース・バックナンバー > 私たちが惑わされやすい思い込みの傾向
社会心理学の分野で「レイクウォビゴン効果」と呼ばれる、人が陥りやすい思い込みの傾向が見いだされています。レイクウォビゴンというのは、物語に登場する架空の町の名前で、この町では「すべての子どもが平均以上の能力を持つ」そうです。レイクウォビゴン効果とは、ここから転じた用語で、人が持つ、何かにつけて「自分を平均以上だと思う」という思い込みの傾向を示す言葉です。「平均」の基本的な考え方からこのようなことは、起こり得るはずはないのですが、それゆえに、「人の思い込み」の特長的な傾向として指摘されています。
危険な目にあわないという思い込み
レイクウォビゴン効果は、一言で表すと、客観的事実と比較して「自信過剰に陥りやすい傾向」のことです。犯罪や事故などに当てはめると「自分だけは危険な目にあわないという思い込み」とでも言えるでしょうか。
この思い込みゆえに、人は物事を必要以上に恐れすぎずに平然と生活できる反面、生命や生活に影響を与える脅威への対応ができなかったり、後手に回ったりということも起こり得るのです。
先の震災の被害があまりに巨大であったこともあり、私たちは、自然災害に対しては客観的事実を見ることができるようになってきています。しかし、身の回りで起こる事故対応、防犯対策や健康管理における、レイクウォビゴン効果への対応は、まだこれからではないかと思います。実際に、何かが起こった後で「まさか自分が」という思いを持たれる方が多くいらっしゃいます。これは、人が「レイクウォビゴン効果」に捕らわれてしまいやすいということを表していると言えるでしょう。
セキュリティ対策の効果は見えない
犯罪対策や防災そして予防接種など、広い意味でのセキュリティ対策全般に言えることですが、「セキュリティ対策は、それが有効に機能している場合には、そもそもの事故が起こらないため、その効果が見えない」という宿命を持っています。レイクウォビゴン効果に加えて、このセキュリティ対策の持つ宿命から、セキュリティ対策は「効果も見えないし、自分には起こりそうもないから、まあ良いか」となってしまいがちなのです。
危ないものを見ないという性癖
ダチョウは、危機や困難が自分に差し迫ると、頭を地面の砂に隠して、その脅威を見ないようにすると言う習性があると言われています。しかし、当然ながら、頭を砂に突っ込んで脅威を見ないようにしても、実際には何の解決にもなっていません。その意味で、頭を隠すというダチョウの危機回避行動は無意味です。この性癖は、ダチョウの英語から「オストリッチコンプレックス」と呼ばれています。ダチョウに限らず、私たち人間も、大なり小なり持ち合わせているモノです。
思い込みの傾向を理解しておくことが大切
「レイクウォビゴン効果」にせよ、「オストリッチコンプレックス」にせよ、社会心理学の分野で明らかにされている人の思い込みや、行動パターンの傾向をきちんと理解しておくことは、事故や犯罪、災害など、身の回りの脅威から身を守る上で、重要な要件となっています。
私たちは、自分たちがこのような「傾向」に支配されやすい存在であるということを、心に置き、あらかじめの対策を怠らないようにしておかねばなりません。
(参考)
・安心豆知識「震災のあの日、目の当たりにした人々の本能とは」
・安心豆知識「非常時避難のイメージトレーニング」
・安心豆知識「セキュリティ対策の宿命 失敗事例しか見えない」
セコムIS研究所
セキュリティコンサルティンググループ
甘利康文
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